観光研究者の街歩きフォト日記

まちを歩き、観察する観光・地域ブランド研究者の写真ブログです。

京町家(京都まち歩き#7)

前回まで"京都と水"について綴ってきましたが、今回からは"京町家"です。

京都の街を歩いていると、昔ながらの町家建築(京町家)に出会います。

京町家といっても統一された定義はなく、京都市景観・まちづくりセンターによれば、次のような建物だそう。

「一般的に敷地形状は、うなぎの寝床といわれるように奥行きが長く、構造は伝統的な軸組木造であり、間取りには通り庭、続き間、坪庭、奥庭を保っているか、それらを過去に有していた建物を京町家と呼んでいる」

写真は、京都の街なかで、たまたま見かけた町家を撮ったもの。

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場所は、四条通から新町通を北へと少し上がったあたりですね。

この建物には、町家特有の意匠が施されています。

格子戸、出格子、虫籠窓(むしこまど)、ばったり床几、などなど。

下の写真は、虫籠窓と鍾馗さんをアップで撮ったもの。

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虫籠窓(むしこまど)は、虫籠(むしかご)のような窓のこと。

角材に土を塗って漆喰と一体化させた防火構造になっています。

瓦屋根に乗る鍾馗さんは、魔除けの神様(道教)ですね。

唐の玄宗皇帝の夢に現れて、疫鬼を退治したとか。

京町家は、残念なことに経済性優先のなか、高層化や防災化などを理由に取り壊され、次第に数が少なくなっています。

一方で、京都の風情や景観維持のためには、町家の保存や保全が大きな課題とされています。

経済性や防災性等とのせめぎ合いのなかで、貴重な地域資産を、どこまで未来へとつないでいけるか。

そのための活用や保全のための知恵と工夫が問われているようです。

                         (京町家、次回に続きます)


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京都ブランドと水(京都まち歩き#6)

これまで何回かにわたって、京都の水についてレポートしてきました。

三方を山で囲まれた京都盆地の地下には、琵琶湖の水量に匹敵するほどの地下水(211億トン)が眠るといわれています(楠見晴重関西大学教授の調査による。同教授は、これを ”京都水盆 ” と名付けました)。

水に恵まれた京都ですが、飲料水や景観の一部に使われるだけではありません。

これまで水に関連する伝統産業等を数多く生み出してきました。

茶道の三千家表千家裏千家武者小路千家)が、京都に家元をおいているのも水との関わりが大きい。

このほか、染物、清酒、料理、和菓子、豆腐、生麩、湯葉、漬物など、数え上げればきりがないほど。

京の伝統野菜(賀茂なす九条ねぎ、堀川ごぼう等)も当地の水の恩恵を受けた特産物ですね。

このブログで紹介した「京都三名水」や「納涼床」「錦市場」なども水と関係が深いものです。

こう考えると、京都ブランドの魅力の多くは、良質で潤沢な水資源の上に成り立っているといえます。

京都の魅力の間口の広さ、奥行きの深さは水から来ている。

今回の旅では、改めてこの点を実感しました。

写真は、祇園の白川を撮ったものです。

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上流の地質が花崗岩で、川底の砂が白いうえ、流れも白濁して見えることから白川の名前が付いたとか。

ここ祇園で鴨川と合流します。


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錦市場と錦天満宮(京都まち歩き#5)

四条大橋から鴨川を眺めたあとは、錦市場までやってきました。

錦市場と言えば、京都市民の台所として知られていますね。

場所は、京都の中心街・四条通の一本北、錦小路通にあります。

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東西390mの両側に、約130店舗が軒を連ねる商店街。

京野菜、魚介などの生鮮食材や乾物、漬物、おばんざい等を商う専門店がひしめいています。

最近は、地元住民よりも観光客や修学旅行生のほうが多いくらいで、観光化され過ぎの感がしないでもないほど。

今回も、外国人観光客が珍しそうに陳列棚を覗いていました。

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この場所に市場(いちば)が立地した理由のひとつが、東端にある錦天満宮にあります。

ここの境内に入ると、水がこんこんと湧き出る井戸があります。

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説明書きによると、地下100尺(30数メートル)から湧出する地下水で、水温は常に17~18度を保つ御神水とあります。

自由に水を汲んでよいとのことで、ペットボトルに詰める人もいました(実は自分のことです)。

冷蔵設備などない昔に、新鮮な魚介や野菜などを商うには冷涼で良質な水が不可欠でした。

このため錦天満宮と同じ地下水を使えるこの土地に、市場が立地したらしい。

京都と水の関係は、なかなかに奥深いものがあります。

それにしても、京都の中心部(繁華街)で、今も綺麗な飲料用の地下水が湧き出ることに驚きました。 


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鴨川納涼床その2(京都まち歩き#4)

京都の鴨川納涼床(のうりょうゆか)の続きです。

最初に小ネタをひとつ。

鴨川の納涼床は「ゆか」と読みますが、洛北・貴船納涼床は「川床」と書いて「かわどこ」と読みます。

また、鴨川は「ゆか料理」、対して貴船は「川床料理(かわどこ・りょうり)」で「ゆか料理」とは絶対に言わないそう。

なるほど、京都の文化は奥が深いです。

さて、京都の夏の風物詩である納涼床ですが、昼間見ると景観上どうかなと思うような構造物でもあります。

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そこで京都府では、鴨川条例に基づいたガイドラインを平成20年に施行しています。

鴨川納涼床審査基準」というもので、京都の景観に配慮した納涼床の外観や構造を具体的に示しています。

例えば、隣り合う床の高さを原則揃える、床は原則として木材とし簡素で伝統的な意匠とする、などです。

京都は景観規制の先進地とされています。

逆に言えば、規制をしないと京都の景観が維持できないということでしょう。

景観は公共の財産です。

ましてや観光都市を標榜する以上は、景観を守るためのルールとその遵守は必要だと思いますね。

上の写真は、夕暮れ時の鴨川べりを撮ったもの。

夕涼みの人たちが川堤に座ったり、散歩したり。

ここは、京都ならではの親水空間となっているようです。


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鴨川納涼床(京都まち歩き#3)

写真は、京都の鴨川納涼床(のうりょうゆか)を撮ったものです。

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京都の文化的基盤(ブランド力)を支える大きな要素が水ですね。

その水を活かした代表的な例が、この納涼床です。

今年はもう終わってしまいましたが、毎年5月から9月まで、鴨川西岸の店が川面に張り出した座敷を設けています。

京都の夏の風物詩ですね。

場所は、二条大橋から五条大橋まで。

毎年、おおよそ90軒ほどが床を出しています。

5月中が「皐月の床」、6月から8月16日が「本床」、8月17日から9月一杯までが「後涼み」とか。

京都の知人に言わせると、5月の「皐月の床」は昔はなかったそう(うろ覚えなので、間違っているかもしれません)。

商売上の理由で期間を長くしているだけ、と京都文化にうるさい知人は嘆いていました。

この納涼床、写真の通り、昼間見ると景観上は余り良いものではありませんね。

夜になれば、明かりが灯って情緒もでるのでしょうが・・・。

そこで京都府では、鴨川条例に基づいて納涼床に関するガイドラインを示しています。

長くなりそうなので、これについては、次回に触れてみたいと思います。

                                      (鴨川納涼床の項、続く) 


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加茂大橋からの眺め(京都まち歩き#2)

京都三名水のある梨木神社(前回のブログで紹介しました)を後にして、出町柳方面へと上ってきました。

鴨川に架かる加茂大橋から、北の方角を撮ったのが下の写真です。

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正面が葵公園で、向かって右手が高野川、左手が賀茂川です。

ここで二つの河川が合流して鴨川と名前を変えます。

中洲状の葵公園の向こうには、下鴨神社があります。

京都の景観で大きなポイントとなるのが、この水辺空間ですね。

街なかに川や水辺があると、途端に潤いのある空間となります。

この場所は、地域住民などの親水ポイントとなっていて、川のなかには飛び石が置いてありました。

次の写真は、その飛び石伝いに川を渡っている生徒さん達を撮ったもの。

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ひょっとすると修学旅行生かもしれませんね。

ぴょんぴょんと跳んで渡る様子には、何やら懐かしさを感じました。

次は、賀茂川を少し上流へと遡った葵橋付近の写真です。

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この街では、あちこちに親水ポイントがあって、川べりを散歩したり、自転車で走ったりする人を見かけます。

このように京都の生活は、水と密接につながっているようです。

いつも周りに水がある暮らし。

多分、それが京都の文化的基盤(ブランド力)を形づくる大きな要素になっていると思います。


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京都三名水「染井の井戸」(京都まち歩き#1)

先の週末は、旅先で撮った写真の整理をしていました。

その際、まだブログの記事にしていない旅先(写真)が結構あったので、これから順次、紹介していきたいと思います。

ということで、今回から ”京都まち歩き” です。

京都には年に数回ほど訪れる機会があるのですが、今回は急に思い立って出かけてきました。

今度の旅のテーマは、京都の水と町家(それに少しの観光スポット巡り)です。

まず訪れたのが京都御所の近くにある梨木神社(なしのき・じんじゃ)。

明治18(1885)年に創建された神社で、明治維新に功績のあった三条実万三条実美の親子をお祀りしています。

萩の名所としても有名で、訪れたときは萩の花が沢山咲いていました。

この神社に ”京都三名水” の一つ「染井の井戸」があります。

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京都の特徴の一つに、水の豊かさが挙げられますね。

その水質は軟水でまろやか、くせがない美味しい水です。

「染井の井戸」には、ひっきりなしに近くの住民や観光客などが、水を汲みにやってきます。

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なかにはクルマや自転車でやってきて、大きなペットボトルに詰め込む人もいました。

京都の文化は、その豊富で良質な水から成り立っている。

そんな ”京都と水” について考えたり、確認したりの旅でした。

なお "京都三名水" は、この「染井の井戸」と「醒ヶ井(さめがい)」、「縣井(あがたい)」を指します。

この三名水のうち、昔のままの姿で現存するのは「染井の井戸」のみ。

残る二つは、一度途絶えたあと復元されています。


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