昨日(2月8日)の日経新聞に「訪日外国人目標1割減」の記事が掲載されていました。
内容は、観光庁が東日本大震災などを踏まえ、訪日外国人旅行者数の目標を下方修正するというもの。
現在は、「観光立国推進基本計画」で2016年までに年間2,000万人、2020年までに年間2,500万人という目標を掲げています。
このうち、2016年までの目標を1,800万人(1割減)に設定し直すらしい(2020年の2,500万人の目標は従来通り)。
なお、訪日外国人旅行者数の実績は、2010年に861万人(過去最高)を記録したものの、2011年は大震災発生等で622万人にとどまっています。
私は、外国人旅行者増への取り組みが、わが国にとって極めて重要な課題であり政策であることに全く異論はありません。
しかし、一方で、この新聞報道の内容には、少なからず違和感を感じざるを得ないのです。
過去、このブログでも何度か主張してきたように、単に高い目標を掲げてみても何の実効性も担保されません。
この目標設定には、日本に外国人旅客を惹きつける魅力が沢山ある、そして、それが効率的・合理的に外国人に提供され、外国人もその情報に効率的にアクセスできる等々の諸前提があります。
ここで考えるべきは、日本には本当に外国人旅客を惹きつける魅力が沢山あるのか? それが効率的・合理的に外国人に提供されるようなシステムとなっているのか?、などの十分な検証がまずは必要なことでしょう。
たとえば「遠い、高い、わからない」とされてきた日本観光について、それらのマイナス条件を勘案しても、なおかつ訪れてみたいと外国人に思わせること、その仕掛けづくりが重要です(もちろん、マイナス条件を無くしていくことも必要です)。
肝心なことは、日本各地で持てる地域資源(自然、歴史・文化、地場産業等)を生かし、個性と活気ある地域を出来るだけ沢山創りだすことです。
これによって日本全体が、多様性ある魅力あふれる国となっていくことが期待されます。
私は、地域を基盤として成立し、地域づくりと密接に関係する観光形態として「地域ツーリズム」を提唱しています。
この「地域ツーリズム」の創造を通して観光ブランドを形成していく。
これこそ、日本の観光地が集客に成功していくための重要なポイントだと考えています。
さらに言えば、観光のターゲットに、外国人も日本人も区別はありません。
すなわち、外国人向けの観光振興と日本人向けの観光振興に基本的な違いはないのです。
観光振興の要諦は、リピーターの確保にあります。
一度訪れた観光地を、もう一度訪れてみたいと思わせられるかどうか。
このような努力を全国各地で続けていけば、自ずから外国人旅行客は日本を目指してやってくるでしょう。
もちろん、日本人の国内旅行ももっと活性化していくと思うのです(こちらも外客誘致と同じくらい、もしくはそれ以上に重要な観光政策です)。
いま我々には、単に数値目標(しかも外国人に偏重した)だけでなく、戦略的かつ地道な取り組みが求められています。
これらについて興味のある方は、拙著をごらんください。
『観光振興と魅力あるまちづくり』(学芸出版社)http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2423-4.htm
『地域ブランドと魅力あるまちづくり』(学芸出版社)http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2502-6.htm