今回は、京町家の造りや雰囲気を実際に体験すべく訪れた「無名舎(吉田家住宅)」の続きとなります。
この建物の特徴は、典型的な「表屋造り」(おもてや・づくり)にあります。
「表屋造り」とは、店舗と住居の棟を分けて、あいだに中庭を設けた町家の造りをいいます。
商家のなかでも、大店に多く見られる建物の構造ですね。
ここ「無名舎」の建物には、二つの中庭があります。
店舗側に面する中庭からは、座敷越しに、もう一つの中庭が見える構造となっています(次の写真の通り)。
これは、手前にある日陰の中庭と、奥の日向(になた)の中庭の二つを造ることで、真ん中の座敷に風が通るようにしたものだとか。
京都の暑い夏を、いかに凌ぎやすくするか、本当によく考えられています。
店舗側(日陰)の中庭は三方正面となっていて、店の間、玄関、中の間のいずれからも鑑賞できるように作られています。
陰影の濃い石灯篭の傍には、高く茂った棕櫚竹(シュロチク)を配置して、とても見応えのある庭となっています。
手水鉢が小判型をしているのは、商家ならではというところでしょうか。
この小宇宙的な庭を眺めていると、時間が経つのも忘れるほどでした。
こうした京町家を維持していくのは、本当に大変なことだと思いますが、ぜひ後世へと受け継いでいって欲しいと心から思いました。