今週も仕事が始まりました。
東京では、まだ余震がたまにあります。 でも街の風景は、以前とほぼ変わらなくなってきました。
いつも乗換えで通っている渋谷の街も、多くの人で活気が戻ってきています。
先日発表された4月の訪日外国人客数は、わずか29万人で前年同月比62%減だったとか。 過去最大の下げ幅だそう。
震災と原発問題で、日本の安全・安心という印象が崩れたため、という分析。
日本経済は、今や外国人の購買力に頼るところが大きくなっています。
このため国を挙げて観光立国を推進し、訪日外国人客の誘致を積極化させています。
これについて私は全く異論がありません。
地域経済の振興や国際交流、日本への理解促進など、外国人に来日してもらうことは非常に大事だと思います。
でも、こと観光面に関して言えば、外国人旅行者に大きく依存する構造は大きなリスクを抱えることだ、という認識が大事です。
今回のようにリスク要因が顕在化すると、外国人旅行客はぱったりと来なくなる。
それへの対応をどう考えていくかが、今、日本の観光政策に問われていると思うのです。
私は外国人観光客誘致と同じくらいの政策的推進力を、国内観光(日本人の!)に振り向けるべきだと考えます。
それも、地域が持つ既存資源に立脚した地域ツーリズムを推進していく。 そして、個々の地域ならではの魅力を創造していく。
今の日本の観光地は、余りに画一化されていて、日本人にとっても魅力があるかどうか疑わしい。
成熟し、海外旅行に慣れた日本人にとって、国内の観光地が真に行ってみたい土地なのかどうか、十分な検証が必要でしょう。
私は観光振興に外国人も日本人もない、と思っています。
本当に魅力のある地域(観光地)は、日本人であろうと外国人であろうと同じです。
そう考えると、地域の特徴(地域資源)を活かした観光地づくり(地域ツーリズム)をいかに国内で組み立てていくか、そして個々の地域でいかに独自の魅力を創造していくか、これらにこそ日本の観光の将来がかかっています。
まず日本人が訪れてみたい、という地域を国内に可能な限り沢山つくる。 そして日本が、全体として重層的な魅力を創造する。
それが結果として、外国人観光客を呼び込むことに繋がってくる。
遠回りのようで、実はこれが最も訪日外国人誘致や観光振興への近道なのです。
そして、これらが叶えば、日本の観光は、今回の震災のようなリスクへ一定の備えを果たすことになると思うのです。
(なお震災地と観光振興については、別途の議論が必要です。 これについての私の考えは、改めて書きたいと思っています)
なお、わが国の観光振興と外国人旅行者との関係については、拙著『観光振興と魅力あるまちづくり』(学芸出版社)http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2423-4.htm などをご覧ください。