昨日の新聞で、観光振興や地域ブランドの面からも注目される報道がありました。
それは、佐渡市(新潟県)と七尾市など4市4町(石川県・能登半島)の2ヶ所が、世界農業遺産に日本から初めて登録される見通しになったとのこと。
世界農業遺産とは、地域環境を活かした伝統的農法や生物多様性が守られた土地利用システムを保護・保全する目的で、国連食糧農業機関(FAO)が認定する「農業版世界遺産」のこと。
この認定制度は「世界重要農業資産システム(GIAHS、ジアス)」と呼ばれ、2002年から始まったものです。
現在、ため池を使った古代ジャガイモ農法(ペルー)や、魚に害虫などを駆除させる水田養魚(中国)など、世界で8件が認定されています。
今回、日本の2ヶ所では、佐渡市が特別天然記念物トキと共生するための減農薬稲作の取り組みで、また能登は棚田や浜辺での営みを組み込んだ里山里海で認定される予定とか。
私は、恥ずかしながら、この報道で世界農業遺産の存在を初めて知りました。
日本には、昔から棚田や里山、里地、里海など自然環境を活かしながら農林水産業を行ってきた歴史があります。
また、近年では佐渡のトキや豊岡(兵庫県)のコウノトリなど、絶滅が危惧される生物との共生を考えた農業なども多くなっています。
漁業では、牡蠣等の養殖に必要な滋養豊かな海の保全のため、森に木を植える運動などが盛んになっています。
そして、それらは地域の生活文化や文化的景観の維持形成に重要な役割を担ってきたのです。
このため日本での今回の認定は、それらの保護・保全活動に大きなプラス効果をもたらすのではないか、と期待されます。
そして、ひいては観光振興や地域ブランド構築等への寄与も大きなものとなるかもしれません。
世界農業遺産の認定が、日本の地域産業に及ぼす影響など、これからじっくりと考えてみたいと思っています。
なお、生物多様性と地域活性化(地域ブランド化)については、拙著『地域ブランドと魅力あるまちづくり』(学芸出版社)をご参照ください。 豊岡市のコウノトリや、東京・銀座のミツバチ、千葉・大山千枚田などの事例を分析しています。
http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2502-6.htm