梼原(ゆすはら)での宿泊先は「雲の上のホテル」でした。
このホテルと隣接して建っている「雲の上の温泉」棟とを空中で繋いでいるのが「雲の上のギャラリー」です。
完成したのは2010年とか。 建築家・隈研吾の設計としては、まちなかにある「マルシェ・ユスハラ」と同年に出来たものですね。
この「雲の上のギャラリー」は、今回の旅で私が一番見たかった建築物です。
ホテル棟と温泉棟の高低差を利用して建てたもので、内部は空中廊下(ブリッジ)兼ギャラリーになっています。
刎木(はねぎ)を何本も重ねながら、桁を乗せていく工法で、真ん中には1本の柱が設けられています。
梼原町のホームページによれば、この「やじろべえ型刎橋(はねばし)」は世界でも類を見ない架構形式の建物だとか。
工法としては、日本三奇橋の一つとされる「猿橋」(山梨・大月市)と同じでしょうか。 「猿橋」は、広重の浮世絵(「甲陽猿橋之図」)などでも知られていますね。
実際に目の当たりにすると、地元産の杉材を高々と組み上げた迫力に圧倒されました。 真ん中の1本の柱も、象徴的なアクセントとなっています。
確かに、他ではなかなか見ることが出来ない建造物ですね。
内部の様子は次の写真の通りです。
内部の木組みの意匠などは、既に紹介した神幸橋(梼原三嶋神社)とよく似た感じでした。
隈研吾が梼原町と関わることになったのは、1987年に知人の依頼で木造芝居小屋「ゆすはら座」の保存運動に協力したのがきっかけだったとか。
木の町である梼原町と、木材を多用した和のデザインを特徴とする隈研吾の設計思想が結びついて、これらの作品群を生み出すことになったのでしょう。
それにしても、この「雲の上のギャラリー」は周辺環境ともマッチして、本当に素晴らしい景観を創り出していました。
皆さんにも見学を強くおススメしたいと思います。
なお、梼原町を訪れたのは、以前にも書いたように2014年6月でした。
この旅のあと、隈研吾の建築作品は、2018年に「雲の上の図書館」と「YURURIゆすはら」が完成しています(今では合計6施設)。
次は、これらの新しい建築物を見学すべく再訪したいと思っています。