観光研究者の街歩きフォト日記

まちを歩き、観察する観光・地域ブランド研究者の写真ブログです。

「地旅」で生き残り〜わが街じっくり案内 旅行業者が連携〜(最近の新聞報道から考えること)

12月5日(月)付け朝日新聞(朝刊)に載っていたのが、表題の記事。

「地旅(じたび)」とは、地方の旅行事業者が、自らのまちの歴史や自然をじっくりと案内するという地域振興型・着地型の旅行商品のこと。

全国旅行業協会(ANTA、約5,500社の中小事業者が加盟)の会員企業が出資する㈱全旅の発案で、「地旅」を商標登録するとともに、年1回「地旅大賞」を選ぶなど普及活動を積極化しているという。

第1回の「地旅大賞」は、長野県飯山市を舞台とする「うさぎ追いし飯山」。 棚田や菜の花の丘といった風景を同行する案内人とともに楽しみ、森林セラピー体験や農家民宿で郷土料理を味わう1泊2日のツアーが受賞した(企画は飯山市観光協会)。

第2回は、千葉県香取市のエアポートトラベル㈱が企画した霞ヶ浦から利根川の河口まで約80kmを双胴船で下り、古寺の住職の話や酒蔵見学、小江戸のまち歩きなどを楽しむ2泊3日のツアーが受賞している。

応募数は各回とも100件以上あって、大賞受賞のほかにも魅力的な旅の提案が沢山あったとか。

地方の中小旅行業者は、これまで「地元から観光地への送客ビジネス」(発地型観光)が主な業務分野だった。

しかしネット化の進展や団体旅行の減少等で、国内旅行業はじり貧になりつつある。

この打開策として考えられたのが、地元の地域資源を活かした「地旅」という企画商品(着地型観光)。


私は、この記事を読んでとても嬉しくなりました。

かねてより私は、旅の分権改革である「地域ツーリズム」の普及を唱えてきました。

漸くそれが、地方の中小旅行事業者のなかで本格的に動き始めた、という実感を得られたからです。

地域が企画し、地域が主導する「地域ツーリズム」の発展なくして観光立国の実現はあり得ません。

その一つの形が、この「地旅」に具体化されているように思うのです。

ただ、課題はあります。

この記事が指摘するように、いかに全国各地の旅行事業者が連携して「地旅」の旅行商品に取り組み、顧客を取り込んでいくのかということ。

そして、それと同じ位に重要な課題として、私は、案内人(ガイド、インタープリターなど)の確保・養成を挙げたいと思います。

これからの旅(地域ツーリズム)では、ごく日常の生活風景や文化的景観、町並み、郷土食などが有力な観光資源となってきます。

その際、重要なことは、地元住民との触れ合いをいかに旅のなかに取り込んでいくか、ということです。

観光振興の要諦は、リピーターの確保にあります。

一度訪れた観光客に、また来てみたいと思わせることができるかどうか。

ごく普通の地域が、観光を地域活性化に生かしていくには、この点が最大の課題であり難事となります。

ある地域を観光客が何度も訪れてみたい、というのは、その土地のヒトたちに会いに行きたい、ということと実は同義なのです。

地域のヒトたちを主役に、その仕掛けをどう作り上げていくか、これによって地域の観光競争力が大きく左右されることの認識が極めて重要です。

ともあれ、繰り返しになりますが、私は長年に亘って主張してきた「地域ツーリズム」の考え方が、この「地旅」で具体化されていくことに大きな期待を寄せています。


なお「地域ツーリズム」について興味をもたれた方は、以下の拙著をご覧頂ければ幸いです。

『観光振興と魅力あるまちづくり』(学芸出版社)http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2423-4.htm

地域ブランドと魅力あるまちづくり』(学芸出版社)http://www.gakugei-pub.jp/mokuroku/book/ISBN978-4-7615-2502-6.htm


                                        (次回から丹波篠山の続きです)