観光研究者の街歩きフォト日記

まちを歩き、観察する観光・地域ブランド研究者の写真ブログです。

春日大社【二十二社詣で】(奈良市)

春日大社を訪れました。

ここは「二十二社」(上七社)のひとつです。

二十二社」とは、神社の社格のひとつで、天変地異などの重大事がおこったときに国家(朝廷)が奉幣使を立てた社格の高い神社を指します。

この社格は、1039年(平安時代後期)に御朱雀天皇により制定されたもの。

今でいえば、強力なパワースポットの集まりですね。

近鉄奈良駅から奈良公園のなかを歩くこと、およそ20分。 御蓋山三笠山とも)の麓に鎮座する春日大社が見えてきました。

写真は、丹塗りも美しい中門です。

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春日大社の創建は768年。 全国に一千社と言われる春日神社の総本社でもあります。

一昨年(2018年)には、創建1,250年を迎えたとか。 とてつもなく長い歴史をもっています。

春日大社は、摂関家である藤原氏氏神ですね(なお、氏寺は興福寺です)。

摂関家は、摂政・関白の地位を独占した最高位の貴族・公家の家系をさします。

そして摂関家は、娘を天皇の后として外戚となることで、その地位を確保してきました。

この点で、朝廷が重視する「二十二社」、それも「上七社」のなかに、奈良所在の神社として春日大社が唯一含まれている訳が理解できます。

お参りしたあとは、いつのように御朱印を頂いてきました。

次の写真は、寄進された沢山の石燈籠を撮ったもの。

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春日大社といえば、寄進された燈籠の多さでも知られています。

釣り燈籠が多いですが、石燈籠もかなりの数がありました。

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参道には鹿の姿も見られました。

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春日大社のご祭神の一柱が、常陸国鹿島神宮から白鹿に乗って来られたという言い伝えから、奈良では鹿が ”神使” として大切にされています。

なお、春日大社は奈良の地の守り神とされたために、遷都の際もそのまま奈良に残されました。

その代わり、長岡京には大原野神社平安京には吉田神社という、春日大社の分社筋の神社が設けられました。

そして大原野神社京都市西京区)は「二十二社」の「中七社」に、また吉田神社京都市左京区)は「二十二社」の「下八社」に含まれています。

結局、「二十二社」には摂関家藤原氏に繋がる神社が3社も含まれています。

いかに朝廷が、同家を重んじていた(気を遣っていた)かが分かりますね。

ともあれ、春日大社の自然豊かで広大(およそ30万坪)な神域を歩いていると、心身ともにリフレッシュされるようでした。

ここには季節を変えて、また訪れたいと思います。


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ならまち藤岡家住宅(奈良市)

「ならまち格子の家」を見学して外にでると、ほぼ真向かいに立派な町家がありました。

案内板が出ていたので読んでみると、そこは「藤岡家住宅」でした。

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この町家は、昭和43年(1968年)に国の重要文化財に指定された貴重な建物。

見るからに重厚な造りで、江戸時代中期の18世紀後半に建てられたものだそう。

築200年をはるかに超えていて、奈良市で最も古い町家のひとつだとか。

切妻造り・桟瓦葺きで、一部二階建ての構造。 

突き上げ戸やばったり床几(揚げ見世)、蔀(しとみ)などを見ると、かつて商家だったことが分かります。

案内板によれば、江戸期には薬種業を営んでいたほか、その後、鉄漿(おはぐろ)、鬢付油、ロウソクなどの製造販売を経て、昭和に入ってからは30年代まで紙類の商売を行っていたそう。

現在は、普通の住居として使用されていて、残念ながら内部の見学は出来ません。

表通りから外観のみの見学でしたが、昔の商売のやり方などが想像できて、とても興味深かったです。

しばし「藤岡家住宅」を眺めてから、周辺を歩いてみました。

次の写真は「ならまち」の街かどを撮ったもの。

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迷路のような道(路地)を歩いていると、まるで昔にタイムスリップしたかのよう。

「ならまち」人気の秘密を、少しは理解できたと思える散歩となりました。


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ならまち格子の家(奈良市)

 「ならまち(奈良町)」にある「格子の家」を訪れました。

その昔、転勤で大阪にいた頃、奈良にはよく出かけていました。

当時の「ならまち」は、今ほどは知られていなかったですね。

沢山の観光客が訪れるようになったのも、最近になってからではと思います。

「格子の家」は、歴史的な町並みが広がる「ならまち」エリアの南側、元興寺などから少し離れたところにありました。

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ここは、かつては普通にあった「奈良町家」をモデルに再現(新築)された施設です。

間口が狭く、奥行きは深いことに加えて、表(みせの間)に格子をはめ込んでいることが特徴ですね。

町家のなかは「みせの間」「中の間」「奥の間」「通り庭」「二階」などに分かれていて、かつての町家の暮らしや雰囲気などを実感できるようになっています。

次の写真は、二階から「通り庭」を撮ったもの。

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吹き抜けの開放的な空間で、採光や風通しが良いように造られています。

壁に立てかけられた長い竹は、お水取り(東大寺・修二会)の際に使った大松明でしょうか。

次の写真は「中の間」にある箱階段です。

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「中の間」は、住人が生活する場所ですね。 

二階へと続く箱階段は、階段のなかが箱状の収納スペースとなっています。

狭い住居で生活するための知恵ですね。

階段は急で上り下りには結構、気を遣いました。

二階の様子は、こんな感じでした。

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さらに「奥の間」からは、蔵が望めます。

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ここでは、熱心に写真を撮っている女性がいました。 写真か建築関係の学生さんでしょうかね。 好きなことが勉強できて、少し羨ましかったです。

ウナギの寝床状で狭い住居ですが、中庭も作られていて風通しもよく、住み心地は案外と良さそうでした。

次の写真は、中庭から「中の間」「みせの間」、そして格子から表通りまで見通したものです。

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かつての奈良町家の生活様式に触れることができて、とても面白い施設でした。

なお、入場料は無料です。

新築ながら、よく出来た町家なので、「ならまち」に行かれた際には、ぜひ立ち寄ってみてください。

ここは、お勧めします。


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宗教都市・天理市その2(奈良県)

天理教本部の周辺には、独特の雰囲気を感じさせる巨大な建物が立ち並んでいます。

写真は、天理大学の建物を撮ったもの。

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入母屋の屋根が連坦する大きな建物に赤い窓枠が施された意匠は、とても特徴的です。

橋脚の先に見える瓦屋根の建物は、天理教本部ですね。

この景観は、一度見たら忘れられないようなインパクトがありました。

次は、天理大学参考館を正面から撮ったもの。

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参考館は、天理大学に付属する博物館です。

本部の周辺には、同じような構造やデザインの建物が沢山建っていました。

どれも規模が大きく、他所にはないような独特の雰囲気があって圧倒されるよう。 なかなかに凄いです。

天理駅前には、こんな洒落た建造物がありました。

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2017年に開業した駅前広場「CoFuFun」ですね。

名前は、その形状と古墳が多い当地に因んだものでしょうか。

遊具などもあって子供たちが元気に遊んでいました。 

訪れたのが昨年の師走で、イベントスペースでは天理大学ラグビー部の壮行会(全国大会)が行われていました。

ラグビーファンの私にとっては、選手を間近に見れるまたとないチャンスだったのですが、時間の関係で断念。 これは残念でした。

駅前から天理教本部までつながっているのが天理本通です。

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昔ながらの商店街で、ごく普通の店もあれば天理教関係の店もありました。

商店街の中ほどで撮ったのが次の写真です。

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どうやら天理教本部御用達の造り酒屋さんのようです。

神道の場合、神前に日本酒は付き物ですが、天理教も同じなのでしょうか。

などなど考えながら宗教都市・天理のまちなかを、あちこち見て回りました。

この街は、地域おこしや観光振興、地域ブランドなどを考えるうえで、かなり参考になると思いますね。

今回はとても興味深く、かつ面白い街歩きとなりました。


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宗教都市・天理市(奈良県)

奈良県天理市にある石上神宮(「二十二社」 のひとつ)を訪ねての帰り、天理教の本部などを見学してきました。

ここ天理市(人口6万5千人)は、わが国最大の宗教都市として知られています。

街の中心部には天理教関連の施設が立ち並んでいて、独特の雰囲気があります。

写真は、広大な敷地に建つ天理教本部を撮ったものです。

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東西南北に礼拝場の建物があって、その真ん中(ぢば)には神殿があり、信者が四方の礼拝場から礼拝できるようになっています。

この礼拝場の入り口では、天理教の法被を着た人たちが迎えてくれました。

見学してもいいか尋ねたところ、誰でも(信者以外でも)入って大丈夫とのこと。

しかも見学は、毎日24時間いつでも可能だとか。

それに記帳などもなかったですね。

礼拝場に入ると、とてつもなく広い畳の広間が続いているのにびっくりしました。

畳は全て合わせて3,157畳あるそう。 

参考までですが、巨大さで知られる東本願寺御影堂(京都)が927畳と言われていますから、その広さのほどが分かりますね。

内部では信者さんが熱心に礼拝されていて、とても清浄な雰囲気が漂っています。

礼拝の様子は、手の動きに特徴があるようです。 

それは、心のほこりを払う動作だとか。

次の写真は教祖殿です。

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礼拝場でしばらく見学させて頂いたあとは、教祖殿へと繋がる長い廻廊を歩いてみました。

次の写真は廻廊を外から撮ったものです。

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廻廊内には雑巾が置いてあって、いつでも掃除ができるようになっています。 実際に何人かの信者さんが、ふき掃除をしていました。

係の人は、白足袋で歩いても汚れないほど綺麗ですよ、と教えてくれました。

神道(神社)とも仏教(寺院)とも異なった宗教空間で、とても興味深かったです。

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係の人たちも、皆さん丁寧に応対して頂いて、こちらが恐縮するほどでした。

学生時代からのスポーツ(観戦)好きで、これまで天理と言えば大学のラグビー部や高校の野球部に注目してきました。 

実際に街を訪れてみて、天理教を中心に動いている様子に新鮮な驚きを感じました。

この街は、信者ならずとも一度は訪れてみると良いと思います。

まちづくりや地域振興(観光振興も含めて)など、何らかのヒントが得られるはずです。


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石上神宮【二十二社詣で】(奈良・天理市)

石上神宮(いそのかみ・じんぐう)を訪れました。

ここは「二十二社」(中七社)のひとつです。

二十二社」とは、神社の社格のひとつで、天変地異などの重大事がおこったときに国家(朝廷)が奉幣使を立てた社格の高い神社を指します。

現代流に言えば、強力なパワースポットですね。

石上神宮の最寄り駅は、JRと近鉄が乗り入れる天理駅です。 そこから天理本通(商店街)をまっすぐに歩くことおよそ30分。 山の辺の道近くに石上神宮が見えてきました。

写真は楼門(重要文化財)を撮ったもの。

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布留山の麓にあるお社は、木々に囲まれて鬱蒼とした雰囲気です。

近づくにつれて鶏の鳴き声が騒がしく聞こえてきました。

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ここでは神社ではなく神宮を名乗っています。 

それは、天皇や皇室の祖先神を祭神として祀っているためとか。

いま全国で神宮と称している神社は、伊勢神宮を筆頭に25社あります。

例えば、鹿島神宮香取神宮熱田神宮などなど。

ただし「日本書記」(720年成立)に記された神宮は、伊勢神宮石上神宮の2社のみとか。

これに従えば、石上神宮伊勢神宮と並んで最も古い(歴史がある)神宮ということになります。

また、古代大和(ヤマト)政権の有力部族であった物部氏氏神であったとも伝わっています。

この由緒からだけでも、石上神宮の重要性や社格の高さが分かりますね。

次の写真は拝殿です。

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入母屋造、檜皮葺で鎌倉時代の造営だとか。 現在は、国宝に指定されています。 さほど大きくはありませんが、しっかりとした造りの建造物でした。

お参りした後は、いつものように御朱印をいただきました。

楼門前の階段を上ったところには、摂社の出雲建雄神社があります。

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この神社の拝殿は、国宝に指定されている貴重なもの。 見逃す人も多いので、参拝される際には是非見ておかれることをお勧めします。

神宮の庭には、鶏が放し飼いされていました。

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鶏は神様の使いですね。 綺麗な羽をもった鶏が遊ぶ姿を見ていると、あっという間に時間がたってしまいました。

天理市には、「二十二社」のうち石上神宮大和神社の二社があります。

現在では、さほど知名度が高いとは言えませんが、社格では最上位に位置する神社です。

一度は訪ねてみられることをお勧めします。


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萱生環濠集落など(奈良・天理市)

大和神社二十二社のひとつ)にお参りしたあとは、近くにある萱生環濠集落(かよう・かんごうしゅうらく)を見学してきました。

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環濠集落とは、外敵から身を守るため周りに濠を巡らせた集落のこと。

奈良盆地に多くみられる集落の形で、その始まりは室町時代の戦国期に遡ると言われています。

大和神社からは、緩やかな坂を上っていった先に萱生環濠集落はありました。

山の辺の道に沿った集落で、なかなかに立派な民家が立ち並んでいます。

この集落の濠は、隣接する西山古墳の周濠を利用したものだそう。

水辺があるので、何気に風情を感じられる景観でした。

山の辺の道をウォーキングしている人たちを見かけましたが、古墳や古社の多いこのあたりを歩くのは面白いでしょうね。

環濠集落を見学してから、もと来た道をJR長柄駅万葉まほろば線)へと引き返していると、あちこちに冬枯れの柿畑がありました。

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シーズンが終わって取り残された柿の実が、なかなかに印象的な風景でした。

萱生地区(天理市)で主に栽培されているのは、当地区発祥の「刀根早生」という品種です。 

これは柿の三大品種に数えられていて、他の二種は「富有」と「平核無(ひらたねなし)」となります。

奈良と言えば「柿の葉寿司」が有名ですが、これも萱生地区のような柿の産地があるからこそでしょうね。 この地区を訪れて、ひとつ賢くなった気分です。

次の写真は、大和神社の近くで撮ったもの。

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奈良盆地では、こうした風景があちこちに残っているので、歩いていても楽しいです。

いつか気候のよい時季に山の辺の道を歩こうと心に決め、JR長柄駅から電車で天理駅へと向かいました。


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